腹黒王子に囚われて

 
「葵……大丈夫か?」


無意識にフラッと一歩後ろへ下がったあたしを、支えるように瑛太が腕を掴んだ。

それに拓先輩が気づく。


「何?
 葵の男?」

「……あなたは確か……

 上沢先輩……でしたよね」


瑛太は、拓先輩のことを知っていた。


というよりも、拓先輩と同じときに通っていた生徒で、彼を知らない人はいないだろう。


それくらい、拓先輩は学校内で有名だったから……。


カッコよくて…
バスケ部のキャプテンで……
誰にでも優しい、憧れの先輩。


だけど……



「ふーん……。
 そういうお前は、えっと………新條だっけ?」

「……はい」



そして、拓先輩も瑛太を知っていた。


瑛太も今、拓先輩と同じで
誰もが知っている学園の王子的存在だから……。