腹黒王子に囚われて

 
もう…
何も言えなくなった。


そのキスは、昨日抱かれそうになった寸前にされたキスと同じで
一歩求めれば、そのまま瑛太の腕に抱かれそうになる。


だけど瑛太は、そのままぎゅっとあたしを抱きしめると、




「こうやって…

 ずっと葵に俺の気持ち伝えてた」




愛おしそうに、そんな台詞を吐いた。




知らなかった瑛太の気持ち。

ずっと偽りのままだと…
演じるために利用しているだけだと……。

キスはただの欲望を満たすものだけで
昨日抱かれそうになったのも、ただの男としての欲だと……。


あの人と……

同じものだと思ってた。



だけど……




「葵……」




もしそうだったら

目の前のこの人は、こんなにも切なそうな目であたしを見ない。