「らしくないじゃーん。葵がそんなぼーっとしてるなんて」
「……ん」


美咲の言葉に、軽く頷きながら、
いまだに6時間目の出しっぱなしだった教科書をしまった。


「……瑛太は?」
「まだ来てないよ。
 終わってないんじゃない?今日はとくに、うちのクラスのHR、早かったし」
「そっか」


正直、瑛太に顔を合わすのは気まずいものがあった。

だけどこんなとこで、避けるわけにもいかないし
せめて学校を出るまでは一緒に帰らないと……。



「ってかさ。
 なんでみんな、必死に化粧直してんの?」


教室を見渡すと、何やら女子が化粧室にもいかず、自分の席で必死にメイクを直している。


いつもこの後にデートを待ち受ける子がたまにやってるけど
今日はやけに人が多い。


「あれ、聞いてない?」
「何を?」



「今日、バスケ部のOBが来るんだよー。
 練習試合するんだって」



「……」




その瞬間、
ドクンと大きな音を立てて、心臓が鳴り響いた。