「何?」 下手に鞄をもっていくと、一緒に帰りかねないので、あえて手ぶらでドアへ向かった。 あからさまにめんどくさそうな顔を向けているのに、目の前の新條瑛太は相変わらずな極上のスマイルで……。 「飯田さん、このあとの予定は?」 「とくにないけど」 「じゃあ、一緒に帰ろう」 「嫌」 「……」 ピクリと眉が動いたのを、あたしは見逃さなかった。 やっぱりこいつ、作ってる……。