「ちょっと!葵っ!!」

「んー?」


帰りのHRも終わって、鞄に荷物を詰めていると、クラスメートのリカがあたしのもとへやってきた。


「お呼び出し!」
「誰が」
「新條くんっ!!」
「……」


名前を聞いて、一瞬誰のことなのか分からなかった。

ふと教室のドアへ振り向くと、笑顔で手を振る新條瑛太の姿があって……


「うわ……」


そうつぶやかずにはいられなかった。


「いない、って言って」
「いや、アンタ思いきり目が合ってるから」
「……」


それでも、いない、と貫き通したい。



だってなんか、
めんどくさいことがこの先待ってる予感が満載だから……。



「………はあ…」



あたしはあからさまにため息をついて、席を立った。