「あー、やっぱいつ見てもカッコいいわー。
 新條 瑛太(シンジョウ エイタ)!!」

「んー」

「一度でいいから、デートしたい!
 あたしも一回接近してみようかなっ」

「んー」

「……ちょっと!聞いてる?葵!!」

「……ん」



あたしの席の前で、窓辺に向かって一人くっちゃべっていた女子。小林美咲(コバヤシ ミサキ)。

毎日聞き飽きたその言葉に、ただ適当に相槌を打っていたら、片手で持っていた携帯を取り上げられた。


「人がせっかく話してるのに、携帯いじるのってなくない?」

「だってその会話、何十回も聞いてるから」

「う……だって、毎日思うものは思うんだから仕方ないじゃん!!」

「じゃー、早く行って来い。ヤツのもとに」

「あ、こら!」


トンと体を押すと、嫌だと言わんばかりにこっちに戻ってきた美咲。

めんどくさい子だな。