そして、今日に至る。

「綺麗。桜吹雪みたい」

「これが、君の言ってた花?」

「うん」

優しい風に、粉雪が方向を定めないまま宙を舞う。
それはまるで、もう2か月もしないうちに咲く、あの花のようで。

「桜は、2回咲くの」
なんて言ってる彼女の肩に、ひらひら落ちてくる白い花びら。

「欲張りな君らしい考えだね」
そう笑って僕はファインダーを覗く。

「でしょう?」
彼女も笑って、触れると消えてしまう花びらに、そっと手を伸ばす。


「僕も欲張りなんだ」
シャッターを下ろしながら、彼女に言った。




「春になったら、"君と桜"を撮りに行こう」




やがて桃色の花が咲き、触れても消えない花びらが宙を舞い始めた頃。
僕の部屋の壁には、白い桜と驚き顔の彼女が写る写真が飾られることになる。



【終わり】