彼女の名前は、風子と言った。その雰囲気にピッタリだな、と僕は思っている。


「ねえ、シンジ」
自分の名前を呼ぶ彼女の声が好きだ。

「あたしね、冬が好きなの」


いつのことだったか。
僕のマンションの部屋に来た彼女は、作業をしている僕の横でそう呟いた。

「冬?」
現像し終わった写真たちを選別しながら、僕は問い返す。
「うん。花がいっぱい見られるから」
ころころと笑いながら言う彼女を、思わず見つめてしまった。
「花?」
さっきから僕は、単語しか喋っていない。
「私の好きな花。冬に咲くの」
ふぅん、と言いながら、僕は一枚の写真を手に取った。