ディートリヒ・フォン・ホーエンツェザー大統領は任期満了に伴い後継者にその座を託した。
大統領選挙により誕生した正統なる後継者だ。

大統領官邸ツェザーブルク宮で彼はあとのことをすべて後継者に託した。

今年も首都ローゼンにエーデルワイスと薔薇と鈴蘭が咲く。

マクシミリアン・フォン・ジーガツェザー大統領は、ディート王子からその座を継ぐと、臣下の……とりわけ彼が彼自身の右腕として若い頃から傍に置いていた従妹のセドリク王子に祝福してもらった。

エーデルワイスの乙女……マクシミリアンはセドリクの事をそう呼んでいたのだが、それは遠い昔の思い出だ。
男装のセドリク王子の若い頃のコードネームがエーデルワイスの乙女であった。
それから月日は流れ、お互い成人し、時の流れは尖っていたマクシミリアンの氷の心を割って溶かした。

雪解けを告げ鈴蘭と薔薇とエーデルワイスが咲く。

彼の心の中にも。

「どこに出しても恥ずかしくない」
セドリクはそう言いはじめる。

「崩御されたわたしたちのお祖父様……ヴィルヘルム皇帝陛下もさぞお慶びのことでしょう。
マクシミリアン様は大統領の器に相応しく、この国を継承されたのです」

セドリクはマクシミリアンの手をそっと取ると手の甲にキスをした。

「マクシミリアン様に無限の祝福を」


そしてマクシミリアンの日々は忙しく、あっという間にクリスマス休暇に入った。

「少しだけ休めそうだな」
アルベルとセドリクとリリィがブッシュ・ド・ノエルを作ってマクシミリアンに見せ、紅茶を淹れてクリスマスの準備をするのを遠目に眺めるように大広間に足を運ぶ。

三人は笑顔でマクシミリアンを迎え、労い、ハグをした。

セドリクを巡る遺恨など遠い過去の話だ。
これがマクシミリアンに用意された未来。
未来は祝福されて……。

皆に祝福された。



Presidential edelweiss
〜エーデルワイスの乙女〜
クリスマスのための物語