ガッシャーーーーン。

派手に転んでしまった。
赤い自転車はひっくり返って坂の下に転がってしまった。コンクリートに投げ出されたあたしは、血がでた膝をおさえながら体制を整えようとした。

「大丈夫?」

えっ?
いきなり後ろから声が聞こえてきた。
その声と共に、すっ、と手が差し伸べられた。

「えっ...」

思わず顔をあげた。
するとそこには、さらさらした黒い髪に、マスクをした男子がたっていた。

制服を着てて、少し暗い青のネクタイをしている。先輩だ。

あたしは、差し伸べられたその手を掴んだ。

立ち上がると、先輩はあたしより背が高かった。
よく見ると、かっこいい。
マスクをしているせいか、あまりよく見えなかったけど、あたしはそう思った。

「あ、ありがとうございます...」

お礼を言うと、その先輩は微笑んで、でも無愛想にあるいていった。