「あー、えーっと、無理だわ。悪い」

 振られた。
 終わったな、私。

 そう悟ったけど、私はなんとか笑顔を取り繕った。

「……ううん、ごめんね」

 泣きそうになるが、それをこらえる。
 それだけを言って、彼の前から急いで逃げる。

 恋愛だとか、そういうものにものすごく疎かった私が、初めて好きになった彼――藤堂秀也。たまたま、クラス委員で一緒になった秀也に、秀也の優しさに、いつの間にか惹かれていた。
 けれど、やはり想いだけでは思い通りにいかないよね。少し、自嘲する。
 元々、秀也には好きな人がいるっていう噂はあったわけで、馬鹿だったのは勝手に傷ついている私だけ。

 そう、私だけなんだ。

 なぜか虚しくなって、こらえてた涙が頬を流れる。
 こっそり、誰にも見つからない学校の屋上で、泣いていた。

 空は、恨みたくなるようなほど綺麗な、茜色だった。