土曜日は晴れ。
けれど雲が多くてしっとりとしている。
土曜日も出勤する結城は、すでに部屋にいない。
拓海は戸締まりをしてマンションを出た。
営業の担当地域を持つようになってから、結城が土曜日にいることがなくなった。
学生時代は二人でお昼までごろごろして、それから買い物に行ったり、テレビを見て過ごしたりした。
そこに他の人が加わることはほぼない。
二人だけの週末だ。
一人の週末は気が重い。
こちらから外出に誘う友人がいるわけでもない。
拓海の世界は狭く、小さい。
他の人たちはどうやって週末をすごしてるんだろうか。
浅草線蔵前駅の改札で待ち合わせをした。
薄暗いけれど、きれいな構内だ。
案内板の前で立つ。
なんだかそわそわと落ち着かない。
仕事仕事。
拓海は自分にそう言い聞かせた。
時間ちょうどにゆきは現れた。
改札から出てくる。
いつもと様子が違う。
なんだろう。
空の色のような、淡いブルーのロングワンピース。
麦わら帽子にかごバック。
平たいサンダルをはいている。
拓海を見つけると
「おはようございます」
と会釈した。
「おはよう」
拓海は少々どぎまぎしながら挨拶を返した。
「わたし、調べてきました。花火問屋さん」
「ありがとう」
「順に見てまわりましょう」
二人は並んで地上に出た。