風が出て来た。
ろうそくの炎が大きく揺れる。
結城が心配そうに空を見上げた。
「ざっとくるかな? 最近多いよね、突然の雨。三本まとめて火つけてみる?」
結城が笑った。
しばらくすると「パタパタパタ」という音とともに、雨が落ち始めた。
大粒の雨の後が、公園の砂地に跡を残す。
「あ、降って来た。間に合わなかったか」
結城はそう言うと、花火の後片付けをしはじめる。
「ろうそく持てる?」
結城がそう言った。
奈々子はうなずくと、持てるだけのものを持って、公園の木の下に避難する。
とたんに大雨が降り出した。
雨で地面が揺れている。
稲妻で空が瞬いた。
しばらくするとごろごろごろと鳴り響く。
「ここにいちゃ、危ないね。マンションまで走れる?」
「うん」
「じゃあ、いくよ」
そう言うと結城は駆け出した。
時々奈々子の方を振り返る。
三分ほど走って、やっとマンションエントランスが見えてきた。
結城が奈々子の方へ手を出す。
奈々子は結城の方へ手を伸ばす。
手をつないでエントランスへ駆け込んだ。
ものすごい雨音がする。
雨のせいで視界が曇っている。
奈々子の服はずぶぬれで、ぴったりと身体に張り付いている。
横を見ると結城もずぶぬれだ。
「着替えなきゃ」
結城が言う。
「拓海の服なら着られるかも……上にあがる?」
結城が訊ねる。
このままの格好でいる訳にいかない。
でも無意識に緊張してしまう。
「はい」
奈々子はうなずいた。

