バスのエンジン音が響く。
最初のバスが到着したようだ。
バスは合計三回、行ったり来たりする。
最初のバスは八時すぎに到着だ。
園庭の入り口にいき、子供達を迎える。
小さな子供達は皆、すでに大汗をかいている。
「おはようございまあす」
かわいらしい声で挨拶する。
「おはよう」
拓海はひまわり組に戻りながら、子供達に挨拶した。
ひまわり組は三歳の子供達をあずかる、年少さんのクラスだ。
一人でできないことも多いので、手がかかる。
バスから降りたひまわり組の子供達は、ベランダに座り込んで上履きに履き替えている。
拓海はうまく靴の脱げない子を手伝った。
飯田先生はすでに出勤してきている。
飯田先生は四十過ぎのベテラン先生だ。
髪はショートで細身、身長は小さい。
黒縁の眼鏡をかけていて一見厳しそうに見えるけれど、笑うととってもかわいい。
接すると暖かい先生だとわかる。
唯一の男性職員である拓海にも、公平に接してくれた。
拓海は新人だけれど年齢が上の方だ。
なのでいざというときに頼ってもくれる。
飯田先生は人を使うのがうまいのかもしれない。
「おはよう。お着替えが終わったら、出席のシールを貼ってね」
飯田先生が言う。
子供達はやっとのことで半袖のスモッグに着替えて行く。
「拓海先生、これ」
りくとがスモッグを拓海に差し出す。
見ると裏返ってしまっていた。
拓海はそれをくるりとひっくり返すと、りくとの頭にかぶせる。
「ありがとう」
りくとはやっと袖を通すと、飯田先生のところへ向かった。
時計をみると、歩きで登園してくる子供達もそろそろやってくる頃だ。
支度が終わった子供達が、おもちゃを引っ張りだして遊びだす。
大きなブロックがクラスの真ん中に散らばり始めた。