上野駅の改札前、売店のすぐ横あたりに立つ。
時計を見るともうすぐ十二時。
奈々子はノースリーブのシャツにジーンズという軽装。
日よけの麦わら帽子をかぶっていた。
どうにでもなれ。
半ば投げやりな気持ちで、結城を待つ。
昨日は一日、診療所でそわそわしてしまった。
一緒に出勤していた八田さんがいぶかしげに奈々子を見る。
奈々子はばれてしまうんじゃないかとヒヤヒヤした。
「待った?」
目をあげると結城が立っていた。
襟のついた白いシャツに、ブルーのジャケットを羽織っている。
奈々子は、自分のピクニックにでも行くような格好とあまりにも違うので戸惑った。
この暑いのにジャケットを羽織るなんて、ずいぶん改まった格好だ。
「荷物持とうか」
結城が奈々子のボストンバッグを手にとる。
「あ、大丈夫です」
「いいから。何時の新幹線?」
「二十分」
「指定席?」
「はい」
「じゃあ、行こう」
奈々子はチケットを手渡すと、二人並んで歩き出した。
相変わらず注目を浴びる結城は、すれ違う人々の視線を集める。
東京でこんなに目立ってるんじゃ、実家近くではどんなことになるだろう。
奈々子は気が重かった。
結城の荷物は少ない。
大きめのトートバッグを一つ下げているだけだ。
「ねえ、ご両親は甘いもの好き?」
「はい」
「あげまんじゅう買った」
結城はバッグから箱を取り出し見せる。
「あの、お気をつかわずに」
「普通は手土産を持ってくもんだろう?」
結城はそう言って笑う。

