マンションに帰って来てから、二人で簡単な食事をした。


結城はシャワーを浴び終わると、ごろごろとテレビを見続けている。
三人がけのソファを完全に独占していた。
長い足を背もたれにあげて、時たま組み替える。


拓海は乾いた洗濯物を片付け終わると、自分の部屋で筋トレをする。
それから熱いシャワーを浴びた。


「なんか飲む?」
そろそろ深夜一時を過ぎる頃。
拓海はバスタオル一枚でリビングに出てくると、ベランダの窓を開けながらそう訊ねた。

「じゃあ水。もう歯みがいちゃった」
結城がけだるそうに答える。

「寝るの?」

「やることないし……」
結城がソファの上で伸びをした。

そこに結城の携帯が鳴った。
テーブルの上で振動している。


結城が携帯を見ると、顔つきがかわった。


あれ? どうしたんだろう。


拓海は首をかしげる。


結城がソファの上に座りなおした。

「もしもし」
電話に出る。

「……もしもし? 奈々子さん?」

窓の外から大通りを走る救急車のサイレンが聞こえた。


結城は窓の外に目を向ける。
電話は切れたようで、耳から携帯を離した。
結城は立ち上がり、ベランダ越しに道路を見下ろしている。


「どうしたの?」

「う……ん。ちょっと出てくる」
結城はポケットに携帯と財布を入れると、リビングから出て行く。
玄関の扉がバタンと勢いよく閉まる音がした。


奈々子って誰だろう?


拓海は結城の様子が少し気になった。
なんてことはない。電話を受け、出て行っただけ。
でも様子がいつもと違った。


真剣だった。