駅までの道のりは、気が重かった。
けれど不思議なことにまだパニックにはなっていない。
心臓の鼓動に合わせて、足を出す。
太陽がそろそろ沈む。
見上げると網のような雲が、茜色に染まっていた。
鳥が飛んで行く。
布鞄を肩からかけ直した。
むせるような熱気は薄らいで、やわらかな風がふいている。
月日は経った。
長いようで、短い。
母親の姿を思い返す。
こんな日の夕方、母親と手をつないで保育園から帰る。
茜色の空。
下から見上げる母の顔。
視線に気づくと母は拓海の顔を見る。
笑いかける。
愛しそうに。
拓海は涙が出そうになって、慌てて頭に浮かんだその映像を消した。

