上野駅で待ち合わせをした。
帰宅する人々。
混雑の中で珠美と待った。
「今日は夜も暑いね」
奈々子は言った。
「だね。熱帯夜」
珠美はハンカチで汗を拭いた。
珠美の顔はふっくらとしていて、優しいイメージだ。
しゃべると意外とはきはきしていて、そのギャップがかわいい。
彼氏ってどんな人だろう。
奈々子はいろいろと想像した。
「こんばんわ」
そう声をかけられて、奈々子は振り向いた。
「きゃー、久しぶり!」
珠美が飛び跳ねる。
「こちら、吉野邦明さん。こちら、戸田奈々子さんね」
珠美が紹介する。
「はじめまして」
邦明は小脇に黒鞄を抱え、笑顔でお辞儀をした。
身長はそれほど高くない。
でも優しい目をしてる。
髪はパーマをかけているのか、短いがボリュームがあって、りりしい眉が印象的だ。
「じゃあ、行こうか。お店予約してあるんだ」
珠美が先頭を歩き出す。
邦明はお先にどうぞ、というように奈々子を促した。
「よさそうな人」
奈々子はほっと胸を撫で下ろす。
「急がせちゃったね」
珠美は振り返りながら、邦明に声をかける。
「いや、いいよ。こっちこそ、ありがとう」
それからちらりと奈々子を見て
「きれいな子だね」
と言った。
「でしょう? 言った通り!」
と珠美が言う。
奈々子は恥ずかしくて、うつむいた。