「ねぇ~和稀ぃ。こんな事

  しちゃっていいの~?」





放課後の学校。

誰も歩いていない廊下で甲高い女の声が

耳に入った。




「・・和稀・・。」



偶然聞こえたその名前が気になって、

私は声のする方へ足を進めた。



胸に広がるザワザワとした胸騒ぎと

『行くな』って言う心の声が聞こえたけど

それを無視して私はいつの間にか小走りに

なっていた。



辿り着いたのは、普段使われていない

空き教室。





少しだけ開いた教室の扉。

その隙間から見えたのは、



知らない女に肩に腕を回され

その女の腰を抱く和稀の姿・・。





「彼女怒っちゃうんじゃない?」


「良いの。もともとあいつは金目当てだったんだし。

  純情ぶって一度もヤらせてくれないし」


「ねぇ~和稀。もうあんな女捨てちゃいなよぉ」



鼻に掛かった甘ったるい声で女が言う。


「それでぇ、あたしだけを見ててよぉ」


「もー、うるさいなぁ。俺が好きなのは

       真奈美だけだから・・」





和稀はそう言うと、女の頬に手を添えた。




そして、二人は唇を重ねた・・。