「あの、・・今日は本当にありがとうございました」
小さく頭を下げると、金髪さんはまた優しく微笑んだ。
少しだけ吹いた風がサラサラの金髪をなびかせて、
私を映すダークブルーの瞳は夜空に浮かぶ月のように妖しい光を放つ・・。
『綺麗....』
男の人に使うのはなんだか変な気がするけど、その言葉が一番ふさわしいと思った。
つい見とれてしまう・・。
「いいよ、別に」
そう言うと金髪さんは私の髪を優しく撫でた。
「お前何があったか知らないけど、もう死のうなんて考えるなよ」
「は、い・・・。きゃっ!」
突然私の髪をクシャクシャにする金髪さん。
「何するんですか!」
「お前面白いな!」
「なんですかそれ・・・」
そう言いながらも自然と笑みが零れる。
なんでだろう・・。
最近全然笑えなかったのに・・。
家でも、学校でも。
だけど、この人の前では
自然に笑えた。
何も余計なことを考えずに・・。
ただ心から・・。
「やっぱお前笑ったほうが良いよ」
「え?・・」
「笑顔のほうが似合うから・・」
そう微笑みかける金髪さん。
ドクンッ..ドクンッ..
心臓がうるさく騒ぎ出す・・。
私が赤くなった顔を隠すように俯くと、金髪さんは私の頭をポンポンッと二回叩いてまたバイクにまたがった。
ハンドルを握って、エンジンを掛ける。
大きな音と共にガソリンの匂いが鼻を刺激する・・。
「笑えよ・・」
「はい・・」
「・・じゃあな」
そう言うと金髪さんは大きな音を立てながら風を切って、
夜の街の中へ消えて行った・・。
私はその後ろ姿が小さくなるまで手を振っていた・・。
静まり返った夜・・。
冷めてしまった温もりと、まだ微かに残る煙草の香りが
私の胸をぎゅっと締め付けた――。