しばらくして席に戻る。
さすがにもう電話は終わっているみたいだった。


「奈々ちゃん、電話ありがとう」

「……うん」


返されたスマホをぎゅっと握り締める。


(ママと貴一さん、どんな話してたんだろう……)

さっきまで恥ずかしさが強かったけど、電話を返されればそんなことを考えてしまう。やっぱり席離れたのは間違いだったかな。

帰ったらママに訊いてみよう。



「そろそろ行こうか」

「うん」

飲みかけだったブラックコーヒーを飲み干して貴一さんが言う。私もそれに頷いて席を立った。

そうしてお店を出て、タクシーで家まで送ってもらい貴一さんとは別れた。
この数日ずっと一緒に居たせいか、こうして離れてしまうとなんだか寂しい。

玄関を開ければすぐそこにママだって居るのに、なんでこんなに寂しい気分になるのだろう……。



「ただいまー」

と、久しぶりに我が家の玄関を開ける。
すると案の定ママがすぐさま駆け寄ってきて、私に熱烈なハグ。


「奈々ちゃんおっかえりー!!」

そんな事言って抱きしめながらほっぺにぶちゅっとチューされる。


「ちょっ、ママ!?」

さすが南の島帰りのママは一味違う。
慌てて離れようとするものの、がっちりホールドされて抜け出せない。


「えっへっへ、なーなちゃん♪」

「もうっ、なに貴一さんの真似してんのよっ!!」

奈々ちゃんと、貴一さんみたいに呼んでぎゅっぎゅっと抱きしめられる。不気味な笑い声付きで。

もしかして酔っ払ってる?
そういえば、微かにカクテルの甘い匂いがする。


「もぅ、ママお酒弱いんだからそんなになるまで呑まないでよ」

「てやんでぇ!これが呑まずにいられるかってんだっ!」

嗜める私の言葉も、謎の江戸っ子口調でそう笑い飛ばされる。


「んもぅ、どうしたの……? さっき電話した時はシラフだったじゃん」

「そう!その電話!ママ、キイチさんとお話したでしょ?」

「うん?」


さっきの貴一さんの電話になにかあったのかな……。



「奈々子、喜んでいいわよ!あなたとキイチさん両思いよ!」

「へっ!?」


ママからの思いもよらなかった宣言。
私と貴一さんが、両思い……?



「貴一さんが、電話でそう言ってたの?」

嬉しくて、でも信じられない。
だって両思いとか。

ドキドキしながらそう尋ねると。

ママは真剣な顔して



「ううん」

と答えた。



(違うんかいっ!!)


若手芸人っぽくずっこけた。