「おや。貴一、あけましておめでとう」

「おめでとー。せっかくだけど、僕らもうすぐ電車乗るから」

「ああ、そうか。すまないね、じゃあまた」


貴一さんが早口気味に言うと、敬二おじ様はそのまま出口の方へ去って行ってしまった……。

私はというと、貴一さんの背中に隠されてなにも口出し出来なかった。



(あーん、おじ様が行っちゃったっ!!)

そう悲劇のヒロインぽく心のかで嘆いていると、「浮気厳禁」と貴一さんが恨めしそうに呟いた。

その言葉に私は無言でぷいっとそっぽを向いた。だって今すぐ出発って訳じゃないのに、おじ様を追い払うなんて。


「……せめていつもみたいに浮気じゃないとか言って欲しいんだけど」

私の反応に、貴一さんがなんだか悲しそうにそう漏らした。




「それはそうと、切符買えたよ。30分発の急行に乗るから」

「……うん。買って来てくれてありがとう」


買って来てくれた事に免じて、やっぱりすぐ出発じゃないじゃんというツッコミはぐっと堪えた。



「時間までお土産屋さん覗いていい?」

「いいよ。行こう」


荷物を持ってない空いた方の手でさりげなく手を繋がれる。
手を繋がれたことに、私はなんだかとてもドキドキした。そういえば、昨日は貴一さんと手を繋ぐことってなかったからかな。

ずっとこうして手を繋いでたい。
馬鹿みたいだけど、本気でそう思った。


お土産の売店では、ママと伯母さんと澪と自分用にお手頃なフルカワのコーヒーカップをそれぞれ買った。



「食器なら家にあったの適当に持ってけばよかったのに」

「とんでもない!」

カップを購入する私を見て貴一さんが不思議そうに漏らす。私はとんでもないと首を振った。


確かに、古川家はフルカワの食器がいっぱいあった。当然と言えば当然だけど。

大皿や小皿に、お茶碗や湯のみまで、あの高級ブランドのフルカワだ。
全部金額に換算するといくらになるのかなんて、恐ろしくて想像も出来ないほど。


貴一さんは身内で、さらに本家の長男だから持ってけばなんて発想が出来るかもしれないけど。

部外者の私からしたらそんなの窃盗で捕まっちゃうって思うわけで。