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ちらちらと雪が降り始めたお昼頃。

降り出した雪が酷くなる前に、私と貴一さんは出発することにした。


隆雅さんや藤子さん、古川家の人々にご挨拶を済ませ屋敷を出る。
駅までは那由多さんが車で送ってくれて、少し早めに駅に到着した。


「送ってくれて、ありがとうございました。あと、大事な秘密も打ち明けてくれて……」

「うん」

駅のロータリーに車を止めてもらい、貴一さんが先に降りる。私も車から降りる時、那由多さんにそうお礼を言った。


「……それから、あの返事ですが。

こちらこそ、ふつつか者ですがよろしくお願いします」

貴一さんの本当の婚約者じゃないけれど、よろしくと言ってくれた那由多さんの気持ちを無駄にしたくなくて、そう頭を下げる。

(いいんだ。今はニセモノだけど、いつか絶対貴一さんを口説き落として本物になるんだから)

そんな決心を心に秘めて。
すると那由多さんも口元を緩ませて笑ってくれた。



「なーなちゃん、那由多となに話してるの。そろそろ行くよ」

車の外では先に降りた貴一さんが待っている。私は「はーい!」と返事をしながら、車から降りる。


そして去り際、


「あ、そうだ。あの気になる理由、わかりましたよ」

私はこっそり那由多さんに耳打ちする。


「理由?やっぱり前世で……」

「じゃなくて!

……あたしも、那由多さんと同じです」


本当に小さな声でそう呟く。

誰にも言えなかった私の秘密。


那由多さんと私。
同じだから、あんなに不思議と互いに気になったのかもしれない。


……それはたぶん、私が貴一さんを好きになった理由と一緒で。
那由多さんという弟を持つ貴一さんのその雰囲気に、私は惹かれたのだろう。


那由多さんは私の打ち明けた秘密に驚いているみたいだった。
私はその顔ににっこり笑いかけて、なにも言わずに車のドアを閉めた。





「なに話してたの?」

「ひみつ、です」

「そう。奈々ちゃんって那由多と仲良いよね」

じとっと恨めしそうに私を見つめる貴一さんの目。大事な弟さんをとられて面白くない?それともヤキモチ?



「大丈夫ですよ、あたしが好きなのは貴一さんだから」

そうさらりと告げると。


「やっぱり敵わないね、奈々ちゃんには」

貴一さんが困ったようにそう漏らす。
頬が微かに赤くなったのは、この寒さのせいなのか、それとも……。


どっちともわからなくて、思わず溜息。
零れた吐息は白くなってすぐ消えていった。