宴会場に戻ると、大人の人たちはもうすっかり出来上がっている。その大人たちに混じった和美ちゃんが中心になってなにやらやっていて大盛り上がりだ。



「あら、おかえりー」

と、私と貴一さんを見て直美さんが声を掛ける。どんちゃん騒ぎな中、藤子さんの姿を探すけど見当たらない。


「母さんは?」

私が尋ねようとしていたところを貴一さんが先に直美さんに尋ねてくれた。

「おかってでおせちと年越し蕎麦の準備中」

直美さんが言いながら新しいグラスにビールを注いで貴一さんに渡している。


(おかってって、キッチンの事だよね?)

聞き慣れない単語に一瞬きょとんとなる。貴一さんに連れて行ってもらおうかとも思ったけれど、直美さんが貴一さんにビールをついでたので私は一人で行くことにした。


「貴一さん、おかってってどこ?」

「向こうの廊下の突き当たりを右に曲がってまっすぐ」

「じゃあ、あたし行ってくるね」

「一緒に行くよ?」

そう言って貴一さんは持ってるグラスを置いて立ち上がろうとする。私はそんな貴一さんに首を横に振った。


「大丈夫だよ一人でも。ね、貴一さんはゆっくりしてて?」


嬉しいけど、申し訳ない。ただでさえ今日はずっと私についててくれて疲れてるだろうし。

私がそう言うと貴一さんは少し困った風だったけど、「迷ったらすぐ引き返してそう言うんだよ」と言ってくれた。
私はそれに頷いて廊下に出る。


長い廊下に、広い家。


「確かに迷いそうかも……」

気をつけないと迷子になりそうで、思わずそうひとりごとを零す。


すると、

「迷子になったの?」

ひとりごとに返事が返ってきた。


「ひゃっ!?」

突然声をかけられたことにびっくりして振り返ると、那由多さんが立っていた。

「びっくりしたぁ〜」

「そんなに驚かなくても……それより、どっか行きたかったの?」

「う、うん。おかってに」


びっくりしてドキドキしている心臓を抑え込みながら那由多さんに答える。
すると、那由多さんもちょうどおかってに用があるらしくて、そのまま案内してもらうことになった。



「さっき、ごめんね」

「え?」

「貴一君のこと。案外ヤキモチ焼きみたいだから」

「ううん、那由多さん悪くないですから」


悪いのはあのエロおやじ貴一さんの方だ。