「クリスマスはどうしてた?」

ふいに貴一さんがそう尋ねてきた。
クリスマスと聞かれ、私は数日前のクリスマスの出来事を思い出す。


「いつも通りだよ。家でママと二人でチキンとケーキ食べてプレゼント交換して終わり」

「陸君たちとは?」

「陸と澪はデート」

「そう……」

「うん……」

「……」

「……」


微かな沈黙が流れる。

そういえば、24日と25日のクリスマス本番は貴一さんから一度も連絡来なかったけ。

そのことを思い出して、胸の奥がつきんと微かに傷む。


自惚れてたわけじゃないけど、なんだか相手にされてないみたいでやっぱり辛い。
23日に一緒にご飯食べて、そのまま未遂ではあるけど布団に雪崩れ込んだりといろいろあったのに。


(本命、やっぱり居るのかな……)

心の中で呟く。頭の中では顔も知らない『松嶋やよい』が浮かんでくる。




「……貴一さんはクリスマスどうしてたの?」

「……うーん、家でごろごろ。ゲームしたり」

「……ひ、一人で?」

「うん」


貴一さんの話に思わず私は「嘘だぁ」と呟く。


「だって貴一さんのクリスマスってもっとバブルなイメージだよ。

レストラン貸し切って若いお姉ちゃんはべらかして、ホテルの最上階のお部屋とか予約してたり。なんならジャグジーに薔薇の花びらとか浮かべてそうな……」


「奈々ちゃんは僕をなんだと思ってるの」



私の言葉に貴一さんが呆れたように返す。べつにふざけて言ったわけじゃなくて至極真面目に言ったんだけどな。

ただ、本当にそうじゃないなら、どうしてそんな寂しいクリスマスを過ごしたんだろ。

そんなんだったら誘ってくれればよかったのに。ビーフシチューでもオムライスでも、ケーキだっていくらでも作っちゃう。



「僕だって意外だよ。奈々ちゃんの年頃なら同級生の友だちとかとパーティかと思ったけど」

「それは、まぁ誘われたりしたけど……」


クリパにも、なんならクリパと称した合コンとかにも誘われてたりしたけど全部断わった。貴一さんから誘われたりするかもって期待してたからだ。



「本当はねー、奈々ちゃん誘ってみようかなって思ったんだけど……」

「えっ!?」

「陸君にそれとなく予定空いてそうか聞いてみたら、友達の誘い断わってるって言ってたから。なにか予定あるのかなーって思っておじさん遠慮しちゃった」

「えぇっ!?」


なにそれ!?
それじゃ、完璧に私の空回り!?


(こんなことならあたしの方から誘いにいけばよかった!!)

そう後悔してももう遅いけど。


「お母さんと仲良いんだねー」

「あははっ、超ラブラブなの……」


のんきに笑う貴一さんに、引きつった返事しか返せなかった。