「……どこの官能小説だよ」

「ちょっ、ちがっ、続きがあるんだってば!!」



12月26日、月曜日。

冬休みにも関わらず私は学校へ登校する。その理由は、森川先生に貴一さんとのことを報告するためだ。

あの夜のことを森川先生に話すと、先生には官能小説だとばっさりと切り捨てられてしまった。

そう。確かにそこらへんは私もそうだと思うんだけど。これにはまだ続きがあって……。



「結局ヤらなかったの」

「……へぇ」

「あ!なにその顔!?信じてないでしょ!?」


そう。あの後布団に雪崩れ込んだものの、結局は事には及ばなかった。

なぜかというと、あの後にすぐ一本の電話が掛かってきたからだ。



「電話?」

「そう!電話!それのせいで空気ぶち壊し!!あー、もう、最悪……」


押し倒していいとまで言った私の勇気を返して欲しい気分。

思い出しても悔しいやら恥ずかしいやらで、保健室の丸いテーブルに顔をうつ伏せる。すると、くくくっと森川先生の笑をかみ殺す声が聞こえた。


「その電話って?」

「貴一さんのお母さんから。年末年始帰ってくるのかーとか聞かれてたみたい」

「あー。そのまま質問攻めで長電話?」


顔を上げると森川先生も苦笑いしてた。
どうやらこの独身の先生にも身に覚えがあるらしい。



実際、貴一さんもお母さんに電話で質問攻めにされてた。

年末年始はいつ帰るのか、お嫁さんはいつ連れてくるのか、孫の顔はいつ見れるのか。とか。




41歳の独身貴族だから当然と言えば当然の質問かもだけど。貴一さんちはお金持ちだから尚更かもしれない。

それに、跡継ぎ問題とかいろいろあるのかも……と、そこまで深読みしてしまうのはドラマの見過ぎかな。




「あ。それでね、私もお正月に貴一さんの実家に行くことになったの」

「は?」