「貴一さんって、那由多さん相手だとムキになるよね」

「それだけ必死なんだよ……」

「必死……?」


貴一さんの言葉にきょとんとなると、貴一さんは体を起こして私の目をまっすぐに見つめた。


「奈々ちゃんを取られたくない」

「那由多さんに?」

「そう」

「……あたしが好きになるの、貴一さんだけだよ」



そう言葉を返して、我ながらなかなか恥ずかしい発言をしたと思う。


ちょっと照れるけど、私がこんなに好きになれる相手なんて貴一さんだけだ。

キスするのも、触れるのを許してしまうのも貴一さんが生まれて初めてで。きっと貴一さんが最初で最後だと思う……。




「……けど、こんなこと言いたくないけど、那由多って僕と似てるでしょ」

「それは……確かに、そうだけど……」

「それで僕より若いから……」

「……そんなこと気にしてたの?」


那由多さんが自分と似ていて。
そして自分よりも若いから。

うっかりぽろっと私が那由多さんの方が良いと思ってしまわないように……貴一さんの今まで行動は私に対する独占欲からくるものらしい。




「傘渡す時にキスしたのも……?」

「あれは単純な嫉妬です」


だってムカついたんだもんと、むくれながら貴一さんが言う。


そんな貴一さんの言葉に私は苦笑い。

だって単純な嫉妬であんな本気の大人のキスとか大人気ないし……もし那由多さんが絡む度毎回そんなことされたら私の身が持たないし。

想像しただけでドキドキしちゃう……。





「……ねぇ、どうしても行くの?」

「……うん」

「行かせたくないなぁ……」


そう言って貴一さんが私のおでこにキスを落とす。

それから、ちゅっちゅっと顔中にじゃれてるみたいな可愛いキスをいっぱい降らす。


私はされるがまま。貴一さんの頭に手を回して、ふわっとしたその髪の毛をもふもふと撫でた。