だからまさか貴一さんとこんなに早く付き合うことになるなんて思いもしなかったわけで……。


(春休みの間中、那由多さんの居るニューヨークにステイするなんて……貴一さんにどう説明すればいいのよ……)


今の貴一さんとの甘い関係を壊してしまいそうな気がして、なんとなく言い出し辛くてそのままずるずる……。


気が付けば、

春休みはもう目前に迫っていた。






■ □ ■ □



「春休み、どうする?」


「へっ!?」


「どっか遊びに行こうか。デートっぽいデートってまだちゃんとしたことなかったからさ……、奈々ちゃん行きたいとこある?」

「えっ!?いやっ、あの……きーちさん、お仕事は?」



アメリカ行きの話が言えぬまま、春休みが目前に迫ったある日。
貴一さんの家でいつものようにゆっくり過ごしていると、ふいに貴一さんから春休みの話題が出てきた。


「一応仕事はあるけど、せっかくなんだしなるべく休みを取るよ」

そう言って貴一さんが甘く微笑む。
その笑みにくらっとしちゃいそうになりつつも、頭の中はあのことでいっぱいでそれどころじゃない。



「いっ、いいよ……そんなっ」


私はしどろもどろになりながらそう返事をする。
そんな私の言葉を貴一さんは遠慮かなにかだと思ったのか「もっと甘えてくれて良いんだよ?」なんて優しく言った。ついでに優しく頭の撫でてくれて……。

この優しさが今の私には少し心苦しいというか……。





ステイ期間は10日間。

けれど、たった10日だけアメリカに行って帰ってきたって英語なんか喋れるわけはない。春休みの次は、夏休みにも同じ様にステイする予定なのだ。


貴一さんと付き合えたからって、良い女への決心は変わらないし。むしろ以前にも増して思いは強くなる。

だから今更取りやめるつもりはない。
今はっきりと伝えないといけない。


けど……



(貴一さんって、那由多さん絡みになるとなんか怖いし……)


お正月の時もだけど、以前のお墓参りの時もまさにそうだった……あの時のキスの真意は怖くて聞けないままでいる。