「やっぱり……」

私の言葉の後、貴一さんがぽつりとそう呟いた。顔を見ればとても優しく笑っていて……。


「……やっぱり、奈々ちゃんには敵わないね……16歳の女の子に、こんなに熱烈に口説かれるなんて……」


嬉しそうに楽しそうに呟いて、貴一さんは笑った。子どもみたいに。




「ねぇ、奈々ちゃん」


「はい」


「好きだよ」


「……っ、はい」


「ずっと、好きだったよ」


「……んっ」


「……なんだか照れるねぇ。こんな風に気持ちを伝えたの、おじさん生まれて初めてだよ」


そう言って貴一さんは照れくさそうに、そして少しだけ泣きそうな顔をして笑った。


「……あれ?ずっと笑っててくれるんじゃなかったっけ?」

「……っう、これはっ……これは嬉し泣きだから、いいんですっ!」


わざとなのか素なのか。
泣いてることを指摘してくる貴一さんは、本当に乙女心のわからないおじさんだ。




「……あぁ、しまったなぁ。お店、入っちゃったの間違いだったね」

「……へっ?」

「だって、奈々ちゃんのこと抱き締められないし」


なんて。
エロおやじは相変わらずだし。



「きーちさんの、えろおやじ……」

「あはは、奈々ちゃんが可愛いからだよ。

……でも、本当にタチの悪いおじさんに引っかかっちゃったねぇ……」


なんて言いつつ、

「もう逃がしてあげられないけど。ごめんね」

と、貴一さんが悪びれる様子もなく笑う。

そんな笑顔にきゅんとなってしまう私も、もうきっと手遅れなんのだろう。



(けど確かに……あぁ、本当にタチが悪いかも……)





貴一さんは、狡い大人だ。



-0314 White day-