「……ごめん」

「ごめんなんて言わないでよっ」



私は貴一さんをめちゃくちゃに責め続けた。

こんなの本当にただの八つ当たりなのに、貴一さんはずっと謝罪の言葉を口にし続けた。


気がつけば、夕陽の光が部屋のなかへ射し込んでいた。殺風景な部屋がオレンジ色に染まっていた。

ふいに外を見れば夕陽が綺麗だった。


(きれい……)

ふと、そう思った。


すると、なんでかな。夕陽が綺麗と思ったら、急に肩の力が抜けてしまった。





「ごめん……ごめんなさい、あたし帰る」

「……送るよ」

「いい、迷惑かけてごめんなさい……もう来ないから」


そう言って私はのろのろと貴一さんの上から降りた。

鞄を拾い上げて、そのまま貴一さんの顔を見ないように歩いて静かに部屋から出た。




バタンと、扉の閉まる音。

エレベーターは使わずに階段で下まで降りた。だってエレベーターがくるのを待ってる間、貴一さんが追いかけてくるかも、なんて期待したくないから……。


「さいあく……」


夕陽が沈む町中を、私は鼻を啜りながら歩いた。


貴一さんに最悪なことしちゃった。

貴一さんと最悪な別れ方しちゃった。




……でも、一番最悪なのは、

こんなになっても
今だに諦めのつかない私の恋心だ。