「凄い荷物だね」

「ぴんぴんしてるじゃんっ!!」



貴一さん部屋のインターホンを鳴らすと、貴一さんはすぐに出てきた。そしてお互いに顔を見合わせて驚いた。

貴一さんは私の抱えた荷物を見て。
私は風邪だと聞いていた貴一さんが元気そうにしてたからだ。


「貴一さん風邪はっ!?」

「風邪?僕が?」

「はい。陸にそう言われて……」


きょとんとする貴一さんに、私はどんどん声が萎んでしまう。
だって目の前に立つ貴一さんは普通に健康そうだから。肌もツヤツヤだし。

たぶん、なんでか知らないけど陸に騙されたんだ。



「うーん……、とりあえず上がってよ。せっかく来てくれたんだから」


そう言って貴一さんは困った風だったけど私を家に上げてくれた。

そうして私は貴一さんの部屋にお邪魔してしまったわけで……。




「えっと……、一応貴一さんに買ってきたから貰ってね」


そう言ってドラッグストアの袋を差し出すと貴一さんは笑を堪えながら「ありがとう」と言ってくれた。


貴一さんが笑いたくなるのもわかる。

今の私、結構マヌケだ……。



「……たっ、食べ物系、適当に冷蔵庫入れとこうか?」

「うん、お願い」


気恥ずかしさを誤魔化す様に、荷物を抱えてキッチンスペースへ。食料系を仕舞おうと思って、冷蔵庫を開けた。


(えっ……)


冷蔵庫の中身を見て、私は一瞬びっくりして声を上げそうになった。

だって、貴一さんの部屋の冷蔵庫にちゃんとした食材が入っているから。


(貴一さん、料理しない人だよね……)


それなのに、卵とか牛乳とか……、それに可愛らしいタッパーには煮物っぽいものが入っていて……。

初めて貴一さんの部屋の冷蔵庫開けた時は水しかないみたいだったのに、今では生活感を感じるほど。


(そっか……、一緒に住んでないって言っても、ご飯作ったり持ってきたりとかくらいするよね……。なんだっけ、通い妻ってやつ?)


冷蔵庫を見てそんなことをすぐに理解した。出来るだけ平然を装いながら私は持ってきた食料を片付け、冷蔵庫を閉じる。


ふいにキッチンに目を向けると、シンクもコンロも綺麗にしてるけど誰かが使用したっていうのがすぐにわかった。

私の知らない調理器具とかもあった。



ふいに、ホーローのお鍋が目に入った。


私が選んで買ってもらった。

ビーフシチューも、カレーも、あのお鍋で作った。



……それを今、顔も知らない人が使って、貴一さんにご飯を食べさせている。

そう考えただけで胸の奥が痛いくらいに苦しくなった。なんだか、とても苦しくて、辛い。

泣き出したくなった。





(嫉妬、ってやつかな……)



胸の奥でぐるぐる負の感情が渦巻いている。


こんなに凶暴な気持ちになったのは、生まれて初めてだった……。