■ □ ■ □


翌週の金曜日。
那由多さんが本当に家に来た。

学校から帰ると普通に家のリビングでお茶を飲んでいたのだ。



「なんですでに居るんですかっ!?」

「予定より早く着いたから」


お茶を啜りながら平然と答える那由多さん。迎えに行く約束もしていたのに、なんだこのマイペースな人は。



「だからって、どうやって家の場所を……」

「和美にヤッシーのパンツと交換して」

「またそれ!?和美ちゃんほんとになにしてんのっ!?」


相変わらず和美ちゃんが変態すぎる件。


それはさておき。
早く来る那由多さんも那由多さんだけど、家に入れるママもどうかと思うわけで……。


「知らない人家に入れちゃ危ないでしょ!」

「えー?だって古川那由多ですって、ちゃんとご挨拶して頂いたし、それに那由多くんイケメンだから」

そう言ってにこにこ笑うママ。

これが、俗に言う「※ただしイケメンに限る」というものなのかと私は身を持って実感した……。





「君ん家のお雛様凄いね」

お茶を啜りながら、那由多さんはリビングに飾られたお雛飾りを見てそう呟く。


「そうですか?古川家はもっと豪華そうですけど」

「美琴のがあったけど、もっと地味で小さかったよ」

「え?そうなんですか?古川家のお雛様って言ったらもっとバブルなイメージですけど、天井まで届きそうな雛壇に金箔でキラキラとか。それか、全部陶器で出来たゴージャスなお人形とか?」

「人ん家をなんだと思ってるの……、そんな成金趣味じゃないよ。ああ見えて普通の家だようちは。もとはただの商人の家系なんだから」


那由多さんが不服そうにそう返す。
そうか、古川家は根っからの貴族様ってわけじゃないのか。

私のなかで、お金持ちって言えば如月の家のイメージが強くて、ついついあの家みたいなことを想像してしまうから……。




「でも、このお雛様は豪華だけど良いね。なんか、君が大事にされてるって伝わってくるっていうか……」

「……へ?」


那由多さんが急にびっくりするようなことを言うから、私は間抜けな声を上げてしまった。

そんな私の反応に、那由多さんも自分の言葉に恥ずかしくなったみたいでぷいっとそっぽを向いた。


那由多さんの反応が可愛いのと、さっきの言葉が嬉しくて、私はこっそり笑いながらお雛様を見直す。



(大事にされてる かぁ……)


胸の奥がむずむずくすぐったい。