〈面白かった?〉

記事を読み終えたタイミングを見計らったように那由多さんから追加でメッセージが届く。

私は那由多さんの言葉に、むっと唇をへの字にする。


〈貴一さんと住む世界が違いすぎるって思い知らされてへこんでます〉

そう画面に打ち込んで返信すると、今度はトークの通知が届いた。私が応答すると、開口一番に那由多さんは


『住む世界が違うってわかってるから、俺に声掛けたんじゃないの?』

と、なかなか辛辣な言葉を私に向けた。



「それはそうですけどぉ……」

私は不貞腐れながらそう答える。
那由多さんはなかなか意地悪な人だ。



『それよりさ、来週の休み暇?』

「来週?暇と言えば暇ですけど……」

『良かった。急で悪いんだけど、家泊めてくれない?』

「……へ?泊めてって、あたしの家に?」

『うん』

画面の向こうで那由多さんが平然と頷いた。私は意味がわからずきょとんとなった。


「なんでですか?」

『そっち行く用事があるから』

「だったら貴一さん家に泊まればいいじゃないですかっ!なんであたしの家なんですかっ!!」

『貴一君の家なんてやだよ。上げ膳据え膳じゃないもん』

「なぁっ!?」


なんという理由。というか、我が儘。

唖然となる私を余所に那由多さんは「いいよね」と、さも当然という風に言ってきた。こういう所は貴一さん似だから厄介だ。




「嫌ですよ!」

『なに?俺に逆らうの?自分の立場わかってる?』

「ぐっ……」


断ろうにも、画面の向こうから意地悪く笑って問い掛ける那由多さん。逆らいきれない私は言葉を詰まらせる。



「……ママに聞いてみます」


それだけ答えて、一旦パソコンの前から離れる。

そうして、リビングでテレビを見ていたママに那由多さんのことを聞いてみると、あっさり了解されてしまった。



「ほんとに良いの!?泊まりにくるの那由多さんだよっ!?澪とかじゃないんだよ!?」

「ええ良いわよ。奈々子もこれから那由多さんにお世話になるんでしょう?おあいこよ」

「ぐっ……」


ママの言葉に私はまたもや言葉を詰まらせる。

貴一さんもまだ招待したことがなかった家に那由多さんを泊めるだなんて、なんだか複雑な気分……。


結局ママの了解を得てしまったことで、那由多さんを家に泊めることが決まってしまった。

『来週の金曜にこっちに来るから』

「はーい」

そう約束を取り付けると、那由多さんは一方的に接続を切った。

しんとなった室内で、はぁっと溜息を吐く。


(とんでもないことになった……)