自己嫌悪に陥りながらとぼとぼ歩いて貴一さんの車へ戻った。
缶コーヒーを手渡して助手席に座ると、ふとある物が視界に入った。
さっきまではそこに無かった、ダッシュボードの上に置かれた小さな箱。
和柄の綺麗な包装紙でラッピングされてて、プレゼントみたいな……。
「これは僕から奈々ちゃんへのバレンタインプレゼント」
「……あたしに?」
「そう。開けてごらん」
促されて、恐る恐る包みを手に取る。
小さいわりにはずしりと重かった。
包紙を破かない様に丁寧に解いて、箱を開ける。中には瓶詰めの金平糖が入っていた。
「こんぺいとう……?」
「うん。奈々ちゃん好きだって言ってたから。おじさんからの逆チョコです」
「チョコじゃないじゃん」
得意気に言う貴一さんに、私もさっきまでの暗い気持ちも忘れて思わず笑みが浮かぶ。
「……でも、ありがとう。金平糖はね、あたしと、ママとお父さんとの思い出がいっぱい詰まってるの」
だから、金平糖は大好きで。私にとって宝物みたいな存在。
そんな金平糖をバレンタインに好きな人から贈られるなんて、とても幸せなことかもしれない。
「僕もそうだよ」
「……え?」
「金平糖にはね、親父と母さんの思い出があって……」
貴一さんがぽつりぽつりとそう零す。
「思い出?」
「そう。バレエの、金平糖の踊りって曲は知ってる?」
「うん。くるみ割り人形の、だよね?」
たららんらん。と、頭のなかにクラッシックの透明で綺麗な曲が思い浮かぶ。そういえばこの曲のオルゴールを昔持ってたっけ……。
「母さんはあれでも結構良いとこのお嬢さんで、若い頃はバレエをやってたんだ。それでその踊りを踊る母さんを親父は見初めてね……」
隆雅さんから藤子さんへの初めての贈り物は、金平糖だった。それからふたりは恋をして結婚をして夫婦になって、貴一さんが産まれて……。
「……素敵」
貴一さんの話に私はぽつりとそう零していた。なんだか胸の奥が幸せな気持ちでいっぱいになる。
「だから奈々ちゃんから金平糖贈られた時は二人とも喜んでいてね。昔を思い出したって、年甲斐もなくね」
「嬉しい……」
ぎゅっと金平糖の入った瓶を握り締める。
からんと瓶の中で金平糖が小さく音を立てた。
「そう言えば、前に言ってた金平糖の容れ物は完成したの?」
ふと思い出してそう尋ねると、貴一さんはまた困った様に曖昧に笑った。
「どうだろうね」
わからないって意味なのかな。
突き放すようなその答えに、変な気持ちになる。
もしかしたら聞いたらいけないことだったのかもしれない。でも、それだと初めから金平糖の容れ物の存在自体教えてくれないはずだし……。
「ねぇ、奈々ちゃん」
ふいに声を掛けられて、はっと顔を上げる。
こっちを見てる貴一さんはまた泣きそうな、情けない顔をしていた。
「大事な話があるんだ」
「だいじな、はなし……?」
真剣な瞳に目が離せなかった。


