■ □ ■ □
余ったチョコケーキの行方は、仁さんのお腹のなかに。
この前の約束で、今週の休日は如月の家に行くことになっていたし。コレクションを見せてもらうそのお礼として、チョコケーキをあげた。
セレブな仁さんに、ただの手作りのお菓子なんて喜ばれないだろうと思ったけど、紳士な彼は律儀にも喜んでくれた。
しかも、セレブなのに渡したすぐ後に食べられた。大口開けて、二口で食べられた。セレブなのに。
「ご馳走様。とっても美味しかったよ」
「お粗末様です」
ペロリと唇を舌で拭う仕草が色っぽい。
「さ、案内するよ」
言いながらするりと腰に手が回される。
そのまま屋敷のなかへと促されて、私はとうとう如月家に足を踏み入れることとなった。
訪れた如月のお屋敷は、なんだか少しだけ怖かった。
怖いと思ってしまうのは、屋敷が広過ぎるせいなのか、それとも後ろめたい気持ちを少なからず私が抱いているからなのか……。
コレクションが飾られているお部屋に入れてもらい、仁さんに案内されながらお父さんの話を聞いた。
「うちにあるフルカワのコレクションはね、もともとお祖父様が集めていたものなんだ」
そう教えてくれた。
仁さんのお祖父様……つまり、私のお父さんは、フルカワの食器を好んでいたと。
私とお父さんとの共通点が見つかって、嬉しい様な、心苦しい様な、複雑な気持ちになった。
なるべくお父さんのことを考えない様にしてコレクションを見て回る。
見せてもらったコレクションは、どれもこれも素敵で、芸術とか器の違いとかまだ全然わからない私でも感動するほどだった。
「気に入ったなら貰っていくかい?」
魅入る私に仁さんが冗談ぽく言った。
「……なに言ってるんですか」
「そのまんまだけど?」
「いやいやいやっ」
貰っていくって、そんなお裾分けじゃあるまいし……。
こんな高級品を。
しかもお祖父さんの形見を。
(ほんと、なに言ってるの、この人……)
そう私が仁さんをじとっと見つめると、仁さんはわざとらしく肩を竦めた。
「本気なんだけどねぇ。僕のお祖父様の形見である前に、君のお父様の形見じゃないか」
「……結構です。だいたい、それを言ったら仁さんのお父さんだって同じじゃないですか」
言い返すと仁さんはなぜか意外そうな、困った様な笑みを零した。
貰うわけないに決まってるのに。
(それに、あたしには隆雅さんから貰ったのがあるからいいいもん)
心の中でそう呟く。
先日送られてきた隆雅さんが作った器は、今では私のお気に入りだ。
「奈々子ちゃんも、君のお母様も、本当に欲が無いよねぇ。もっと欲張ればいいのに」
「そんなこと出来る立場じゃないでしょ」
「……ふむ、実はそうでもないんだけどね」
「へ?」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
仁さんがなにか意味深なことを言っていたみたいだけどすぐに誤魔化された。
「さ、ひとまず休憩してお茶でも飲もうよ」
余ったチョコケーキの行方は、仁さんのお腹のなかに。
この前の約束で、今週の休日は如月の家に行くことになっていたし。コレクションを見せてもらうそのお礼として、チョコケーキをあげた。
セレブな仁さんに、ただの手作りのお菓子なんて喜ばれないだろうと思ったけど、紳士な彼は律儀にも喜んでくれた。
しかも、セレブなのに渡したすぐ後に食べられた。大口開けて、二口で食べられた。セレブなのに。
「ご馳走様。とっても美味しかったよ」
「お粗末様です」
ペロリと唇を舌で拭う仕草が色っぽい。
「さ、案内するよ」
言いながらするりと腰に手が回される。
そのまま屋敷のなかへと促されて、私はとうとう如月家に足を踏み入れることとなった。
訪れた如月のお屋敷は、なんだか少しだけ怖かった。
怖いと思ってしまうのは、屋敷が広過ぎるせいなのか、それとも後ろめたい気持ちを少なからず私が抱いているからなのか……。
コレクションが飾られているお部屋に入れてもらい、仁さんに案内されながらお父さんの話を聞いた。
「うちにあるフルカワのコレクションはね、もともとお祖父様が集めていたものなんだ」
そう教えてくれた。
仁さんのお祖父様……つまり、私のお父さんは、フルカワの食器を好んでいたと。
私とお父さんとの共通点が見つかって、嬉しい様な、心苦しい様な、複雑な気持ちになった。
なるべくお父さんのことを考えない様にしてコレクションを見て回る。
見せてもらったコレクションは、どれもこれも素敵で、芸術とか器の違いとかまだ全然わからない私でも感動するほどだった。
「気に入ったなら貰っていくかい?」
魅入る私に仁さんが冗談ぽく言った。
「……なに言ってるんですか」
「そのまんまだけど?」
「いやいやいやっ」
貰っていくって、そんなお裾分けじゃあるまいし……。
こんな高級品を。
しかもお祖父さんの形見を。
(ほんと、なに言ってるの、この人……)
そう私が仁さんをじとっと見つめると、仁さんはわざとらしく肩を竦めた。
「本気なんだけどねぇ。僕のお祖父様の形見である前に、君のお父様の形見じゃないか」
「……結構です。だいたい、それを言ったら仁さんのお父さんだって同じじゃないですか」
言い返すと仁さんはなぜか意外そうな、困った様な笑みを零した。
貰うわけないに決まってるのに。
(それに、あたしには隆雅さんから貰ったのがあるからいいいもん)
心の中でそう呟く。
先日送られてきた隆雅さんが作った器は、今では私のお気に入りだ。
「奈々子ちゃんも、君のお母様も、本当に欲が無いよねぇ。もっと欲張ればいいのに」
「そんなこと出来る立場じゃないでしょ」
「……ふむ、実はそうでもないんだけどね」
「へ?」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
仁さんがなにか意味深なことを言っていたみたいだけどすぐに誤魔化された。
「さ、ひとまず休憩してお茶でも飲もうよ」


