教科書とノートを開きながら、自分の手帳も机の上にこっそりと開く。


(げっ、今年のバレンタインデー平日じゃん)

2月のカレンダーの、2月14日のマスを見ると火曜日のマーク。
平日ってことは貴一さんに会える確率もぐんと下がってくるわけで……。



(そうなると、バレンタイン前の土曜か日曜かな……)

赤ペンで土曜日と日曜日のマスにぐるっと丸をつける。だけど、この日に貴一さんと会えるかどうかも微妙だ。

付き合ってるわけじゃないし、私は貴一さんの彼女でもなんでもないから約束なんて出来ない。


貴一さんは社会人で、しかも社長さんだからとっても忙しいだろうし。

それに、私の他にも遊んでる女の子は多そうだし……。




(やっぱりバレンタインやめとこうかなぁ……)

そんな寂しいことを思いながら手帳をパタンと閉じて、ふっと息を吐く。


ふいに黒板に目を向けると、授業の内容は結構進んでいた。考え事に夢中でノートになにも写してなかった私は慌ててシャーペンを握った。

バレンタインのことはなるべく考えない様に。貴一さんのことを考えない様に。

無心でノートに黒板の文字を書き写した。




■ □ ■ □


その週末の放課後。
澪の家にお邪魔してお菓子作りの練習をした。

作ったのは簡単なチョコケーキ。
6個作って、2つを試食。簡単なレシピのやつだったけど思った以上に美味しく出来きて、私も澪も大喜び。

特に綺麗に焼き上がった4つは記念に写真も撮って、綺麗にラッピングした。



「澪は陸にあげるの?」

「うん、あとお父さんにも」


そう答えた澪の言葉にほっこりする。
お父さん幸せ者だな。


「神崎先輩とかお母さんには?あげなくていいの?」

「いいの。お兄ちゃん甘いの嫌いだから。お母さんは、お父さんのと半分こするから」

「そうなんだー」


仲の良い夫婦だな。


(そうなると、やっぱり1人2個ずつで分けることになるよね )

私はママ以外に渡す人も居ないし、1個余っちゃうけど……。



(自分で食べるのはちょっともったいないよなぁ……)


せっかく美味しく綺麗に出来たから誰かに食べて欲しかった。

その「誰か」の候補に、貴一さんが真っ先に思い浮かぶ。


(……って、会う予定もないのになに考えてんだあたしはっ!)



乙女思考全開な自分が恥ずかしくて、澪に気付かれないように頭を振った。