流兄が出て行ったあと、春ちゃんは扉の鍵を締めると、私を見つめた。
何がなんなのか全然わからないよ…。
どうして私と春ちゃん2人だけで保健室に?
春ちゃんは私を見つめたまま喋らないし…。
「春ちゃん?」
「いいんじゃねーの?」
春ちゃんは、そう真剣な目で私を見ると、ポケットに手を入れると私に近付いてくる。
「わがままになればいいだろ」
そう言って私のそばまで来た春ちゃんはぽんっと私の頭に手をおく。
思わず目を瞑る。
「春ちゃん…」
「ほら、言ってみろ。そのためにここに来たんだから」
え?
わざわざ私のために?
あぁ、やっぱり春ちゃんは優しい…。
そう思ったら、なんだか涙が出そうになった。
そんな顔を隠すように俯けば、「優?」と優しい声が上から聞こえた。
それは春ちゃんの声で、いつもより優しくされたそれは、私に“言ってもいいよ”と言ってくれてるみたいで、もっと泣けてきてしまった。
「春ちゃ…」
少し震えてしまう声に何を思ったのか、春ちゃんは私の顔を上に向けた。
「あっ…」
そう声を漏らせば、ポロッと目から零れる雫。
「何泣いてんだよ?」
「春ちゃ…ちが…うの…」
「うん」
「わ…私…欲張りになっちゃったの…」
「うん」
ポロポロと零れる涙を春ちゃんの手が拭ってくれる。
その手はとても暖かくて、もっと涙が溢れた。
「…っ。春ちゃんと付き合えただけでも嬉しいのに…。私もっとふれてほしいって…思っちゃったの…」
こんな恥ずかしいこと女の子からいうなんてって思うかもしれない。
もしかしたら、春ちゃんいやがるかもしれない。
そんなマイナスなことを考えて、スカートの裾をギュッと握った。
「んなの可愛い欲だろ。わがままにもなんねーよ」
そう言った春ちゃんを見上げれば、とっても優しい笑顔がそこにあった。

