まあ今回は山田くんを許してやろう。



風向きが違う方へ行こうと、ベランダの端へ移動する。




パタパタと叩いた黒板消しから出たチョークの粉が風に乗っていくのを見つめていると、ここから見える裏庭が視界に入った。




そこにはみんなの王子様、仮村がしゃがみ込んでいた。




何をしているんだろう。




本性を知っている彼を少しの興味で見ていると彼は何かを触っていることに気が付いた。




しかもあれは猫だ。

仮村くんは猫を触っている。


幸せそうに触られている猫と、嬉しそうに笑う仮村くん。



その笑みは王子様の時のような作りものでなく、また昨日の黒い笑みでもない。


普通の男子高校生のような笑みだった。





――――――本当に優しいのか、優しくないのか分からない人だな。






ここから見える仮村くんを見ていて、そう思ってしまった。