目が合って1秒後、彼は私に向かって歩く。


彼は確実に私の方へ来る。
100%来る。

逃げようかと思ったけど、にこにこと笑った顔が逃げるなよ、と言っているようでその場から動けなかった。




「おはよう、前田さん」



王子様ボイスで私に挨拶をする。

昨日は今日よりも低い声だったからとっても違和感。



仮村くんの周りにいた女子達は私のことを嫌そうにジロジロ見る。


何なんだよコイツ。仮村くんに挨拶されやがって。生意気なんだよ。



ってみんなきっと思ってる。
目が怖いですもん。




「お、おはよう?」



とりあえず挨拶を返してみる。
仮村くんの挨拶をスルーすると周りの女子達に、仮村くんの挨拶無視すんじゃねー、とか言われそうで。一応しておく。



仮村くんはにこにこしたまま腰を曲げて顔を私の直ぐ真横まで近づけた。


そして王子様ボイス、ではなく黒ボイスで、




「言ったら、分かってるよね」




耳ともで囁くように言った。




彼は、仮村貴雪は昨日のことをかなり根に持っていると確信した。


コエー。本当にコエーよ。




「じゃ、そういうことだからよろしくね」



いつもの王子様に戻った仮村くんは女子達を引き連れ去っていく。



取り巻きの女子達にかなり睨まれたような気がするけど。気にしないでおこう。