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「はあ」



放課後先生に頼まれた雑用をこなした後、誰もいない教室でため息一つ落とす。



イライラは昼休みの時よりも収まったけどまだ佐々木さんにはムカついてる。




「くそっ!」




乱暴に鞄に筆箱を入れる。

物に当たってしまった。いけないいけない。




「まだ昼のこと引きずってるのか」



不意に低い声が耳に入る。

声がする方を向くと、ドアの縁に仮村くんが偉そうに寄りかかっていた。



「昼休みの時見てたの?」

「あんだけ大きい声だしてりゃ嫌でも聞こえる」



ドアから私の方へと移動すると、私の前の席にドカッと座る。

どうやら今は王子様バージョンではないらしい。黒い仮村くんだ。



「仕方ないでしょ。キレちゃったんだから、私が」

「あんなのほっとけばいいだろ」

「そう、だけど…」


だけど、佐々木さんはバカにした。
母子家庭の子だからって、母子家庭だからってバカにした。



「母子家庭バカにしたから。だから許せなかったの」

「だからってな…」




分かってる。相手にしなければ良かったんでしょ?
上からモノ言う、普通の家庭だからって母子家庭をバカにした佐々木さんを許せなかったんだ。