蒼夏の刹那

「……めっちゃうまいわ。今まで食べた桜餅の中で、この桜餅が一番うまい」



蒼の声は涙声だった。



私は必死で我慢した。泣けば、止まらなくなるし蒼との大切な約束も守れなくなるから――



「蒼と出会えてよかった……忘れないよ、ずっと。だから、さよならだね」

「…………ああ。何度生まれ変わっても――おれは、藍花を必ず好きになる。また、君を探すから。だから、この世界で君は幸せに」



私と蒼はお互いの顔を見ないまま、さよならをする。



速水くんはきっと、離れた場所で待っててくれている……最後まで、私に優しい人。



葉桜が哀しげに揺れる。



まるで、蒼がこの世界からいなくなるのを哀しむように。