蒼夏の刹那

オレンジに染まる坂道にたどり着くと、風でさあっと葉桜が揺れる。



「蒼?蒼どこ?私だよ、藍花だよ」



蒼の姿を探すのに、そこには誰の姿もそこにはなくて、急に不安が襲う。



そんなはずない、蒼はちゃんといる。



頬に吹きつける風が髪を散らし、涙が地面に落ちていく。



綺麗な夕暮れの空も、蒼の好きな葉桜も、大好きなこの坂道も、涙で滲んでしまって何も見えない。



その時、懐かしい匂いがした。



ふと顔を上げた時、また涙が零れ大粒の涙が地面へと消えていく。



いつもと何も変わらない光景がそこにはあった。