瞳をそっと開ける。



そこはいつもと変わらない見慣れた部屋。



何もない、虚ろな部屋。また、涙が流れ零れ落ちる。



今までみていたのは、記憶(オモイデ)――



全部夢。過ぎ去った幸せだった、遠い遠い夢。



「会いたい、会いたい、会いたいよっ……そうに会いたい…………あ」



“夕暮れの坂道”



蒼の笑顔、自転車を引いた蒼と一緒に歩いた光景がよみがえる。



「……あそこに行けば、また蒼と会える……」



そう呟き、私は重い体を引きずりながら明日行くために少し思考を休めようと、ベッドにダイブした。



蒼の事だけが、今を生きている意味。



涙もきっと明日には、笑顔に変わるはず……そう思いながら意識を手放した。