部屋の壁一面に貼られた現像し、引き伸ばしたたくさんの桜の写真。



春に咲き乱れる満開の桜じゃなく、夏の青々とした葉桜。



「うわあ……桜がいっぱい!すごいね……!」

「おれの宝物。……異性で部屋に入れたの、藍花がはじめてや」



蒼がそう言ってくれた時、蒼の顔を見る事ができなくて恥ずかしくてうつむいてたら、そっと手を握られびくりとすると、すごく優しい声が耳に届いた。






「ずっと声……かけたかった。ずっと、藍花に触れたかった……今こうして一緒にいられて幸せや。おれ、藍花の事気になってたけど迷惑かけたなかったねん。ほら、読書の邪魔になって嫌われたら嫌やろ?」






おどけた口調で照れたように笑う蒼。






嬉しかった、大好きだった……あなたの、笑った顔……とてもあたたかくて。