忙しい中でどうしてこんな言い合いしているのか、と。

冷静な頭の回転は持っていたものの、ひとしきり文句を言った。

チームメンバーも他部署もくすくす笑っていたが、そんな和やかな会社がとても心地良いと感じていて。

気付けば、呆れたように私も笑っていた。




こんなにバカなことをやっても、暖かく見守ってくれる尾上部長と水鳥さんに心から感謝したいと思った。

櫻井さんはもう少し大人しくなった方がいいと、心底思う。




本当は知っているけれど。

その馬鹿みたいな顔の下に、真面目で冷静なもう一人の櫻井さんがいることを。

たまに光る眼の奥が、それをいつだって証明してくれている。




「もう、知りませんから。私、休憩してきます。いいですよね、尾上部長?」


「あぁ、行って来い。議事録も届いてるから大丈夫だ。櫻井は俺と打ち合わせな」


「了解しました。ふざけてる場合じゃなさそうですね」


「そういうことだ。山本と水鳥嬢に感謝しろよ。必要書類がほとんど揃ってるから、会議室に缶詰出来るぞ」


「そりゃ、スゴイデスネ・・・。お二人とも、アリガトウゴザイマス」




ちょっとだけ顔がこわばった櫻井さんを見て、水鳥さんと二人顔を見合わせて笑った。

これから部長と二人で何時間かかるか分からない打ち合わせをするのだ。



水鳥さんと顔を合わせて、少しだけ苦笑いをする。

集中力の必要な打ち合わせのために、美味しいコーヒーを用意しよう、と考えてオフィスを後にした。