「ほんと、からかい甲斐があるわね。櫻井君がシグをいじめる気持ち、ちょっとわかっちゃったわ」




左のほっぺたにつん、と人差し指を差して言われた。


チームのみんなはすでにくすくす笑いでこちらを見ている。

部長まで少し肩を揺らしている。



櫻井さんが席を外している時で、本当に良かった。

この場にいたら、間違いなく横から口出ししてくるだろう。

意地悪な顔をして、ニヤリ笑ったその顔で、とんでもない爆弾を落としてくるはずだ。

想像しただけでげんなりする。




「そんな気持ち、分からないでくださいよ」


「あら、どうして?こんなに可愛いのに、構わないテはないわ」


「そんなぁ~」


「櫻井君だけに、いじらせてばかりいられないわね」




そう言って颯爽と水鳥さんは席から離れていく。

今までのことがなかったかのように、次の仕事に取り掛かるために。



いつもながら美しい後姿に目を奪われながらも、くすくすと肩を震わせた営業達。

キッと男性陣に目を向けて、ふてくされたように言葉を発する。




「もうっ!ちゃんと仕事しなさいよ!来週のブライダルフェア、全員でヘルプに行くことになってるんだから必要資料用意しておくのよ!」




男性若手営業の二人は、笑いをこらえながら私の方を向いた。

その他に、私をじっと見つめてくる視線の主がいる。

その視線に気づいて、もう一人へ顔を向けた。



今日は、疲れる一日になりそうだ。