だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版






「あぁ、もう限界ですよ~。食べないと、頭回らないまま打ち合わせになっちゃいますよ・・・」


「ハハッ!お前の顔見てたら、俺まで腹へってきたな。しょうがねぇから、奢ってやるよ」


「・・・いいですよ、別に。奢ってもらう理由がありません」


「まぁ、そう言うなよ。モリモリ食えよ。今日はまだまだ長いからな」


「・・・じゃあ、遠慮なく」




私の返事を聞いて、櫻井さんは楽しそうに笑った。

目の奥が、あまり笑っていないことが気になったけれど、何も言わずにおいた。

気付いてしまったことで、私の変化まで見抜かれてしまっては溜まったものではないからだ。




「ちゃんと食えよ」




いつもの笑い方なのに、いつも通りにしてくれない表情。


あぁ、この顔。




また私の頭の中を覗こうとしているに違いない。

最近は以前にも増して櫻井さんと一緒にいる時間が長いせいか、この人の頭の中を読めるようになってしまった。

いいのか、悪いのかは、とても微妙だけれど。




「変な痩せ方したら、胸もケツもなくなるぞ。」


「・・・っっ!!!!!」




そう言って、鼻唄でも唄いそうなくらいご機嫌に笑った。

爽やかにセクハラするのは本当に反則だと思う。

あんまりあっさり言われたら、怒るどころかなんだか恥ずかしくなってしまう。





しかも、よく見てる。

『変な痩せ方』ってところが。

仕事のことで頭いっぱいになって、周りが見えなくなるような人だったらよかったのに。