だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版






会議室を出て、担当の方々に挨拶をしてから先方の会社を出る。

打ち合わせの余韻が残っているせいか、ウェディングイベントの構想が頭を回っていた。


今年のイベントを体験してみないと分からないけれど、きっと充実感を得られるはずだ。

まだ一年後の仕事。

それを少しずつ形にしていくのはとても難しい。

流行り廃れの世界なので、今決められることなんてほとんどないに等しい。

だからこうして、今年の運営会社に足しげく通いどんな風に運営するのかを知る必要があったのだろう。


コンセプトはどうしていけばいいのか。

数種類のコンセプトから舞台装飾や巨大ポスター、映像の原案を作成していく。

単純作業だけれど大切な土台。




今年よりもインパクトを。

今年よりも想い入れを。

そして、何よりも。

たった一日のために、一生を夢見る花嫁たちへ最高のプレゼントを提供するために。




「しぐれ、時間今しか空かないから飯行くぞ」


「あ、はい。そうですね」




気が付けばもう午後二時を過ぎており、お腹はかなりペコペコだ。

会議に夢中になると時間を忘れてしまうので、ご飯なんて二の次になるのは、この業界の悪い癖だ。


次の打ち合わせは四時。

移動時間は三十分程度。

今食べないと、確実に夜ご飯とセットになってしまうこと間違いなしだ。