だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版






四月。

春の日差しがまぶしい季節。

いろいろなものが新しく始まる季節。


地下鉄やJRの駅で真新しいスーツを見掛ける機会が増えた。

まだまだ緊張した面持ちでガラスに映る自分を確認する。




出勤し始めて一週間。

一番気が抜けやすい時期であるため、緊張の糸を張っておく必要のある時期。

まだまだ気など抜けません、という顔の新社会人と沢山すれ違う。




初々しいなぁ。




私にもあんな時期があったはずなのに、もう忘れてしまった。

初めて社会の中に自分の『居場所』が出来る季節。



といっても、うちの会社は決算が五月なのであまり『新規一転』という感じではない。





入社して三年が過ぎた。

正確には、三年と半年。

中途入社なので、普通の社員とは入社時期がずれている。




ひとつの会社にこんなに勤めることになるとは思ってもみなかった。

私は元来、飽きっぽい人間であり、ひとつのことをコツコツ長く、なんて性に合わない。


仕事だってそうだ。


いろんな会社を転々として今に至る。

社会人歴六年目にして四社目。

今時の世相をよく現した人物だのだろう。



やりたい仕事は?と聞かれて、すぐに出てくるほど目標もない。

本当にしたいことを人に伝えたところで、現実味のないものなのも自分でよくわかっている。




言えるものか。




転職活動をしていて思ったことは、


『会社にとって使いやすい人間』


である自分は重宝されるということ。