だから私は雨の日が好き。【春の章】※加筆修正版






「アイツら、弱音吐くか?激務で有名な企画営業部で、新卒社員が弱音を吐かないのは、スゲェことだぜ。今までなら配属すらしなかっただろうな」


「え・・・。でもスゴイ普通に配属されてましたけど、去年。むしろ、二人も受け入れたのうちの部署だけですよね?」


「そうだぜ。尾上部長のゴリ押しだ」


「何でそんなこと・・・」


「お前がいたからだろうな」




当たり前だろう、みたいなドヤ顔をされても。

私はポカンとなるばかりで。




「逞しいってことは、頼りたくなるってことだ。アイツらは、しぐれのおかげで頑張れるんだよ。それは、俺らもだけどな。お前が、支えてくれてンだよ」




ふい、と顔を背け少し恥ずかしそうにしている横顔を見つめる。

それを見て、ふふっ、と笑いが漏れた。




なんてまどろっこしい人だろう、と思う。



人の前で素直に背中を押してくれるような人ではないけれど。

人を怒らせて後を追わせるような、そんな面倒なことをしなくてもいいのに。

そんなことをしなくても、呼び出されれば素直にそれに従うのに。



照れ臭かったんだろうな。




こういう不器用なところは、一番近くで感じていた。

企画営業部で人が頑張るのは、櫻井さんのおかげでもあると思うのに。

そんなこと、自分では微塵も感じていないようだった。